脂肪肝
脂肪肝とは
中性脂肪が肝臓内に蓄積しフォアグラのような状態になります。脂肪肝には、アルコール性脂肪肝と、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)があります。NAFLDの発症には生活習慣病との関連が指摘されています。
NAFLDのうち、80~90%は進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL)で、10~20%は脂肪肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行しうる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に分類されます。NASHの5〜20%が肝硬変に至り、その比率は年々増加しています。
脂肪分の摂りすぎだけでなく、ごはんや麺類などの「糖質」も脂肪肝の原因となります。糖質は腸で吸収されエネルギーとして使われますが、余分なエネルギーは肝臓へ運ばれ、脂肪酸に代わりこれが中性脂肪となり肝臓に蓄えられます。さらに、極端な食事制限など無理なダイエットにより「低栄養性脂肪肝」と呼ばれる脂肪肝になることがあります。脂肪が蓄積すると、慢性的な炎症から肝臓が硬くなり(肝硬変)、がん化すると言われています。ただし肝硬変を経ずにがん化する場合も多く、遺伝子や体質の異常、代謝の異常、環境要因など、色々な原因が交絡してがんになるとされています。
脂肪肝の症状
早期にはほとんど症状が出ません。
以下の症状が当てはまる方は早めに検査を受けましょう。
- 食思不振
- だるさ・倦怠感
- みぞおちや右わき腹の痛み
- むくみ
- 黄疸
- おなかの張り
脂肪肝の検査方法
腹部超音波検査 | 身体への影響がなく、簡便な検査法です。脂肪肝は高輝度に(白く)描出されます。特に腎臓と比較して肝腎コントラスト(肝臓が高輝度/腎臓が低輝度)があると脂肪肝と診断されます。進行すると深い部分の肝臓が描出されにくくなります。 |
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超音波エストログラフィー | 肝臓の線維化を診断するためには、肝臓に針を指して組織を採取する肝生検を行うことがあります。しかし体に針を刺すため、出血などの合併症が起こります。最近では侵襲性が低い、超音波エラストグラフィー検査が行われます。肝臓は炎症を起こすと修復するときに「線維化」を起こしますが、この検査では超音波が伝わる時間から組織の硬さが分かります。エラストグラフィーの数値は、脂肪肝→脂肪肝炎→肝硬変へと進行度合いの指標になります。 |
血液検査 | 肝細胞が破壊されると、肝細胞でつくられる酵素であるAST、ALTが増加します。アルコール性脂肪肝はASTが高くなりやすく、NAFLはALTが高くなりやすいです。γ-GTPは飲酒、NAFLDや肝炎によって上昇し、肝疾患の発見に役立ちます。 |
脂肪肝の治療方法
基礎疾患の治療が原則です。肥満や内臓脂肪が原因の場合には減量や過度な食事と運動、糖尿病・高血圧・脂質異常症が原因の場合にはそれぞれの治療、二次性脂肪肝(ウイルス性や薬剤性など)が原因の場合にはウイルス治療や原因薬剤の除去を行います。
食事療法では、カロリー制限し、体重減少させることでNAFLD患者の肝機能、肝脂肪化を改善させるとされています。また、エネルギー摂取の量や内訳の見直しを行い、炭水化物もしくは脂質を制限することが重要です。
運動療法では、週3〜4回、1回につき30〜60分程度、中等度〜強度の有酸素運動を、4〜12週間継続することで、体重減少がみられない場合でも脂肪肝が改善するとされています。中等度の有酸素運動として、通常速度でのウォーキングなどが挙げられます。また同様にスクワットや腕立て伏せなど、筋肉に負荷をかける運動も脂肪肝が改善するとされています。
脂肪肝の対策・対処法
内臓脂肪や皮下脂肪と違って、肝臓についた脂肪は減らしやすいですが、一方で脂肪は肝臓から付きやすいという特徴があります。一時的に脂肪が減っても、生活習慣が元に戻れば再発します。再発した脂肪肝はNASHに進みやすい傾向があるので、悪い生活習慣を断ち切るよことが大切です。
脂肪肝の中でも肝臓がんに至るものがあります。無症状であっても、健康診断などで肝機能異常、脂肪肝や肝炎ウイルスの感染を指摘されたら受診するようにしましょう。