胃がんとは

胃がんは、炎症や萎縮をおこしている粘膜から発生するとされています。胃粘膜に萎縮がおこると萎縮性胃炎の状態になり、胃粘膜が腸粘膜に置き換わり、胃がんへと進展するとされています。この変化にヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が大きく関わっています。

もっとも胃がんができやすいのは幽門・胃体下部です。腫瘍が増大すると、みぞおちの痛み、食事の通りにくさ、貧血といった様々な症状を引き起こしますが、無症状で検診の胃カメラによって発見されることも多いです。胃がんは早期に発見し治療すると根治が得られますが、進行してしまうと根治が難しくなりますので、早期発見・早期治療が非常に重要です。

胃がんの中には粘膜の表面にはあまり変化を起こさず、胃壁の内部でがんが進行し硬くなっていくスキルス胃がんというものもあります。内視鏡検査でも気づかないことがあります。スキルス胃がんは若年者でもみられ、一般的に予後の悪い胃がんとして知られています。少しでも症状があれば若い方でも1度は検査することをおすすめします。

個人差はありますが、胃粘膜にできたがん細胞が大きくなり、胃カメラで見つかる大きさになるのに10数年かかると言われています。早期がんは放置すると2~3年で進行がんになると言われています。進行に伴ってがんの根が深くなると、膵臓や大腸に浸潤したり、腹腔内にちらばったり(腹膜転移、腹水)、リンパ節や肝臓・肺などに転移します。

胃がんを早期に発見するためには胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受ける必要があります。また、ピロリ菌に感染した胃は胃がんリスクがあるため、除菌したことがある方でも早期発見のために定期検診が必要です。

胃がん

胃がんの症状

早期にはほとんど症状が出ません。
以下の症状が当てはまる方は早めに胃がん検査を受けましょう。

  • 胃の痛み・不快感・違和感
  • 胸焼け
  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲不振
  • 黒色便・吐血
  • 体重減少
  • 食事がつかえる
  • 腹部膨満感

胃がんの検査方法

胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査) 昨今、バリウム検査にかわり検診でも増えています。内視鏡を口や鼻から挿入して、食道から胃、十二指腸を調べます。粘膜の表面だけを可視化する波長を選別して光を当てることで観察します(BLI・NBI検査。細い血管や表面の構造を詳しく観察することができ、表面にある腫瘍が非常に見えやすくなります。がんが疑われる病変があった場合、生検を行い診断します。詳細は胃カメラ検査の項目をご参照ください。
バリウム検査(X線検査) バリウム溶液を飲んで、様々な体位をとりつつ撮影し、粘膜の様子を観察します。がんが粘膜にあると、微細な凹凸の変化や形態学的に異常な変化を影として見つけ出すことが出来ます。狭窄や動きの評価も可能で、スキルス胃がんの発見にも有効と考えられています。
ABC検診 採血で、ヘリコバクター・ピロリ菌の抗体価と、胃粘膜萎縮マーカーのペプシノゲンを測定し、胃がんの危険性をABCの3群に分類します。このABC分類を用いて、胃の状態に応じた検診間隔を設定し、効率的に検診を行う方法がABC検診(胃がんリスク検診)です。ただし、これは胃がん検診に代わるものではありません。
腫瘍マーカー 血液中のCEA、CA19-9を測定します。がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査など、その他の検査の結果も合わせて判断します。

胃がんの治療方法

がんの切除が可能な場合は胃カメラによる治療(内視鏡治療)か外科的手術になります。内視鏡治療の適応は原則として粘膜内にとどまる根の浅いがんです。進行すると、外科的手術と抗がん剤を組み合わせた治療が必要になります。外科的手術は、病変の場所と広がりによって切除する範囲が異なります。胃の出口側(幽門)に病変があれば、胃の出口側2/3以上を切除する幽門側胃切除、入口側(噴門)や全体にあれば胃全摘や噴門側胃切除(胃の上部を切除する方法)が必要となります。近年では開腹手術や腹腔鏡手術に加え、ロボット支援下での手術が増加しています。早期がんであっても時に胃全摘が必要になることもありますが、胃温存手術を積極的に行う施設もあるので、しっかりとした情報収集と主治医からの説明が重要になります。胃がんが発見された場合には、当院では病状と患者さんの背景に合わせ、がんセンターや大学病院をはじめ、適切な施設にご紹介いたします。

胃がんの対策・対処法

発症リスクが高くなる40歳を過ぎたら、症状がなくとも一度は胃カメラ検査をすることをお勧めいたします。できるだけ早くがんを発見するため、胃の痛み、胃もたれなどの症状があるときは、早めに当院にご相談ください。
がん全般の予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、適正な体形の維持が有効であるとされています。塩分の取り過ぎに注意したり、ピロリ菌の除菌を行うことも有効です。
また、当院では胃がん術後の方の検査や、胃もたれなどの術後消化管機能障害なども積極的に診療しています。胃の術後でお困りのことは何でもご相談ください。

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